小説(short)

□あの日の君と(上)
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サスケが酷い怪我を負った。それは、自分を庇ってのこと・・・。
“なんで?”って思う。“どうして?”って、思う。
こんな自分を庇って怪我するなんて、“馬鹿だ”と思う。

苛立つ心。けれど、軋み、痛み続ける心。

初めて“忍”である自分を自覚した。
自分が“化け物”を飼っていることを、思い知った。

自分の弱さを知った。自分の甘さを思い知った。
無知という言い訳で、ごまかしてた、全て・・・。



□□ あの日の君と(上)□□


サスケは、自分とは、違う・・・。
なるとはいつも、そう思っていた。
アカデミーの頃から、抜き出て優秀で、血筋も良くて、里の皆からの期待を一身に背負っていて。
同じスリーマンセルになっても、その差は歴然で。
いつもヘマばかりする自分と、そのフォローまでしてくれるサスケ。

一緒にいるだけで、自分を惨めにすら思う。
本当は、サスケのことを誰よりも認めていた。憧れて、いた。
でも、そんなことを口に出してしまったら、自分が自分ではいられなくて・・・。
一方的に突っかかっていたのは、自分。
傷つきたくなくて、自分の弱さを、認めたくなくて。

ただ、自分のことも、認めて欲しくて。

なるとにとって、サスケはいつも前を行く存在。
近づきたくて、並びたくて。
仲間として、ライバルとして、認めて欲しくて。

そう、誰よりもサスケに、認めて欲しかった。



ようやく、ほんの少し、近づけたと思った矢先だった。
チャクラのことを学んで、それをコントロールするための修行。
なかなか上手くできなくて、それがサスケも同じで。
お互い意地を張って、夜遅くまで修行に明け暮れた。

身体はボロボロだった。上手くできない自分自身に気持ちも沈む。
それでも、近くにサスケがいるというだけで、頑張れた。
初めて二人で木のてっ辺まで登りきったとき、精根尽き果て、立つことすらおぼつかないなるとに
肩を貸してくれたサスケ。
少しだけ触れた、温もり・・・。暖かな、確かな、それ。
ほんの少しだけ、サスケに近づけたと、思った。


それなのに・・・。


何が、『火影になる!』だ。
何が、『里のみんなを見返してやる!』だ。

自分は、何をした?いったい、何ができた?
仲間を守ることもできなくて、もしかしたら、失っていたかもしれなくて・・・。
そんなことがあって、やっと気付くなんて。


ちゃんと、『強くなりたい』と、思う。
守りたいものを、守れる『強さ』が欲しいと、思う。

見返すんじゃなくて、そのための強さなんかじゃなくて、“大切なもの”を守れる『強さ』−−−。

でなきゃ、認めてもらえる訳がない。

やっと、気が付いたんだ。
ただ、“火影になりたい”んじゃない。誰かを“見返してやる”ための強さが欲しいんじゃ、ない。




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