小説(short)
□願い
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□□ 願い □□
差し込む陽の光−−−。
サスケはその眩しさに重い瞼を瞬かせる。
(朝・・・か・・・)
浮上する意識、ゆるやかな覚醒。
僅かに首を動かすと、鼻先に触れるふわふわとした金色の髪。
思わずそれを引き寄せ、顔を埋める。
「んっ・・・」
腕の中で身じろぐ小さな身体。ぬくぬくと暖かい体温は、まだ子どもである証拠。
けれど、自分もそれほど大差はない、のだ。
並んで立てばほんの少し、背が高いくらいだ。
自分の手の平を太陽にかざしてみる。それは、まだまだ小さな手・・・。
あとどれ位したら、この手は大きくなるだろうか。
早く、大人になりたいと、願う。
『強くなりたい』−−−。
サスケは腕の中にあるその温もりを、そっと抱きしめる。
失いたく、ない。けれど・・・
自分には成すべきことがあった。きっとこの子はそれを望んではいないだろうけれど、いつかはこの手
を離し、自分はそこにいく。
怒るだろうか、悲しむだろうか・・・。
本当は、いつも笑っていて欲しいのに、幸せにしてやりたいのに、どうして自分にはそれができないのか・・・。
わかっている。
それならば何故、この子を受け入れたのか。
最初から、もっと突き放せばよかったのに・・・。
苦しめることになるとわかっていたのに、伸ばされた手に縋りついたのは自分。
触れたくて、欲しくて、自分のものにしたくて。
手にしたものはこんなにも、暖かい・・・。
乾いていた自分の心を、潤してくれた。ささくれ立った心を、癒してくれた。
与えられたその温もりに、溺れたのは自分−−−。
我が侭で、自分勝手な子ども。
確かなものなど、何一つ与えてあげられないのに、その優しさに甘えた子ども。
それでも・・・、
「好き・・・なんだ。なると・・・」
溢れ出る想い。愛おしい、守りたいと想う。
本当は、この手を離したくない。ずっと、一緒にいたいのに・・・。
それでも自分は、きっとここを出て行くんだ。
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