小説(short)
□闇
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■■ 闇 ■■
自分の中に“化け物”がいるのだと、知った。
“九尾”という、化け物−−−。
それはかつて、この木の葉の里を襲い、多くの人々の命を奪ったのだと、聞かされた。
今なお、『天災』として、人々の心の底に刻まれる恐怖。
大切な者が次々と殺されていく。
皆で長い時間をかけて築き上げてきたものが、たやすく壊されていく。
目の前で、繰り広げられた地獄・・・。
その元凶の存在、“九尾”。
それを腹の中に抱えているのだと−−−。
何で自分がこんなにも、里のみんなから忌み嫌われているのか、ようやくわかった。
理不尽だと思っていた、自分への里の人々への態度。
訳のわからない戸惑い、不安、焦燥。
知ってしまえば、それを受け入れざるを得ない・・・?
“仕方のないこと”?
それが俺の“運命”だから?
だから俺は“独り”でも当たり前?どんなに酷い仕打ちを受けても、我慢しなくちゃいけないの?
どうして、どうして?
俺が何をしたの?俺って、何?
『俺って、何のために生きてるの?』
どうして『殺さないの?』
俺が死ねば“九尾は死ぬ”んでしょ。
こんなちっぽけで、弱い子ども。
いつだって、殺せるじゃないか。
この身に無理やり化け物を封印され、里の人々の憎悪を一身に背負い、
その記憶を決して忘れない『戒め』のために生かされている存在?
俺を責めればそれで気が済むの?
自分たちの悲しみを、昇華できない憤りを、俺にぶつければ、幸せになれるの?
俺の気持ちなんて関係ない?
俺がなにも考えていないと、感じていないと思っているの?
俺には里の人々の気持ちを考えろって?黙って耐えろって?それが当たり前だって?
そうやって、『生きろ』って?
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