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□儚
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■■ 儚 ■■


「“九尾”を手に入れた」

マダラが静かに告げる。その顔には薄っすらと笑みが浮かんでいた。
サスケの表情が、僅かに動く。その場に居る『暁』を名乗る面々は、それを横目で見据える。
しかし、サスケも直ぐに表情を消す。
それを見て、マダラは満足気に頷いた。

「ペインは良くやった。そもそも、あ奴だけで九尾を手に入れようなどとは思っていなかったからな。
ゼツを張らせていて正解だった」


ペインと“九尾の人柱力”であるうずまきナルトとの戦い。それは、木の葉の里全体を巻き込んだ
壮絶なものとなった。特に、木の葉の里の受けたダメージは大きい。
そのドサクサに紛れて、うずまきナルトを手に入れたのだ。
ナルト本人も相当の手傷を負っていたため、事は容易に進んだ。


「“九尾”が我らが手の内にある以上、後は容易いことだ。既に、我らがこの世を支配したも当然。
焦ることはない」

順を追って、尾獣を人柱力から抜き出せば良い事−−−。
問題は、それに必要な“力”と“時間”。
『暁』にも、与えられた被害は大きい。それを補いつつ、事を進める必要がある。
現在、『暁』の本軸として残るのは、マダラを筆頭に、ゼツ、柿鬼鮫のみ。
サスケと、その仲間である重吾、水月、香燐では、多少荷が重い。
それでも、手の内に駒が揃っている以上、未来は既に明白だ。


「九尾の人柱力は、今どこに?」

重吾がマダラに問う。

「地下牢に閉じ込めてある。重症は負っているが、あの程度ならばすぐに回復するだろうからな」

“九尾の力”で。

「そうだな。あれの世話はお前達に任せよう。死にさえしなければ、さして問題もない。その時が
来るまで、確実に生かしておけ」

そう言って、マダラは重吾、水月、香燐を見やう。

「サスケは・・・?」

水月がサスケを窺いながら、マダラに問う。

「サスケは我と共に」

その言葉に、サスケは顔を上げ、静かに頷く。

「では、早速始めようではないか。我らの未来のために−−−」

マダラの低い声とともに、各々が動き出す。


・・・・・・・・・・


「ちぇっ、何だよ。俺達は雑用係りかぁ?」

暗い廊下を進みながら、水月が愚痴を漏らす。

「仕方、ないわ。私らにはあれは無理だし・・・」

っていうか、そんな義理もないわ・・・。香燐も面白くなさそうに呟く。

「でもよぉ、サスケのヤツもひでぇじゃんか。俺らのこと見向きもしなかったぜ」

水月は口を尖らせ、重吾を見やう。

「サスケには、サスケの考えがある」

重吾は前を向いたまま、そう、答える。


そもそも、自分達が『暁』として身を置いていること自体、サスケには何か考えがあってのことだと
重吾は薄々気付いていた。
サスケはうちはマダラを信用している訳では、ない。

確かに、イタチが死に、事は新たな局面へと動き出した。
“うちは一族”と“木の葉の里”には、長きに渡る『確執』があるのだと、マダラは言った。
それは、『真実』かもしれない。

しかし、マダラはまだ何かを隠している−−−。

そのために、サスケを利用しようとしていることは、明白だろう。
そのことには、サスケも気付いているはずだ。それでも、サスケはマダラの元に居る。


それがどういうことなのか、今の重吾にはわからない。
けれど、

「サスケを信じるしか、ない」

重吾の言葉に、水月は肩を竦め、小さく息を吐く。

「まぁ、わかってるけどよぉ・・・」

そう、今は事を見守る他はない。


「そういや、九尾のガキって、あのサスケをやたらしつこく追っかけてきたヤツだろ?」

水月が思い出したように呟く。

「あの金髪くんね。結構かわいかったわぁ」

「お前にゃ、それしかねぇのかよ」

「何よ、うっさいわねっ」

言い合いを始めようとする二人を、重吾は無言の威圧で押しとどめる。

「睨まんでよ、重吾ぉ」

あんたの顔、怖いんだからさぁ。
香燐の言葉に、水月も頷き、同意する。

「あ、てめ。緊張してんのか?九尾が怖いんだろ?」

おどけたように言う水月に、重吾は真面目な顔で答える。

「相手は“九尾”の人柱力だ。気は抜けない」


八尾との戦いで、尾獣の力は痛い程よくわかっている。それを身に宿す人柱力の力も、然り、だ。
特に、尾獣最強と言われる“九尾”をその身に宿している者ともなれば、用心するに越したことはない。

「けどよ。あのガキ見てるとそんな気がしねぇよ。すっげぇ、馬鹿っぽかったじゃん」

「そうね、邪悪な感じもしないし・・・。サスケの元チームメイトらしいけど、サスケとは随分雰囲気が
違うわよね」


何度か見かけたことがある。木の葉の忍、“うずまきナルト”。
忍には珍しい金髪と、鮮やかな青い瞳。
言われるまで、ナルトが“九尾”の人柱力であろうとは、思いもしなかった。

『人柱力』といえば、その運命に翻弄され、その人格に影響をきたす者が多い。
しかし、うずまきナルトの印象は、いたって『普通』だった。
どちらかと言うと幼い、やんちゃな少年といった風でしかない。
青い瞳は真っ直ぐに前を向き、そして、かつて仲間であったサスケを追い続けていた。



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