小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第3章
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「そう、ね。多分、お前よりは知ってると思うよ。色々、聞いたから、ね。鳴門の父親から・・・。
多分、伊館もそうなんだろうなぁ・・・」

そう言った案山子を、佐助は食い入るように見つめる。
けれど、そんな佐助を気にした風もなく、案山子はそっとナルトの寝顔を見つめた。

「ねぇ、この子。あの話が本当なら、きっと“火影”になるんだろうね。でも、今は15、だっけ・・・?
あぁ、もうややこしいったら」

そう砕けて言いつつも、案山子の表情は険しい。

「きっと、まだ辛い時期なんだろうね・・・。それなのに、・・・」

笑おうとするよね。
案山子の言葉に佐助も眉を寄せ、徐に酒を口に含む。そして、熱い息を吐く。

「鳴門も、そうだった・・・」

どんなに辛いことがあっても、笑おうとした。

“諦めない−−−”

口癖のように、そう言って。
そんな鳴門にいつのまにか惹かれていたのは、自分・・・。

「ホント、一体何なんだろうねぇ。これも、何か意味のあることなのかなぁ・・・。あの人もよく、
言ってた。物事には必ず意味があるんだって・・・」

それを知りたいと思うのが、人−−−。
案山子はそう言って、目を細める。

「俺の知ってることは、教えるよ。本当は、三年前に話すつもりだったんだ・・・。けど、あの頃の
お前はそんな状態じゃなかったから、ね。ま、状況が状況だから、仕方なかったんだろうけど・・・」

真剣な案山子の目。
佐助は一旦視線を伏せ、唇を噛む。


確かにあの頃、誰の言葉にも耳を貸さなかったのは、自分。
弱かったの、だ。
身体ばかり大きくなって、大人になったつもりでいて。
結局、逃げることしか出来なかった。
けれど、・・・。

「俺はもう、逃げない・・・。だから、教えて、くれ・・・」

ちゃんと知りたいと、思った。
いや、知らねばならないと、思った。

小さな寝息を立てて傍らで眠っているナルト。そのナルトの手が、まだしっかりと佐助のシャツ
を握り締めていて。

佐助はそっと手を伸ばし、その前髪をかき上げる。
「ん・・・」と、ナルトは身を震わせ、佐助のそ手に幸せそうな顔を寄せてきた。
嫌でも重なる、幼い日の鳴門・・・。

しかし、今目の前にいるナルトが取り戻そうとしているのは自分ではない“サスケ”。
その“サスケ”に言い知れぬ嫉妬を、覚える。
ナルトのこと、だ。きっと、どんなことがあっても“諦める”ことはないのだろう。
そんな風に追いかけられる“サスケ”はある意味贅沢だ、と思う。

けれど、そう・・・。自分は・・・。
無理やり忘れようと、した。ただひたすら願っただけで、・・・それが叶わなくて。

(俺は・・・)

諦めて、いたのだ。いや、怖かったのだ。
現実を認めることが。・・・自分が、傷つくことが・・・。
それでも今は・・・。

「諦めたく、ない・・・」

取り戻したい、と願う。
大切な、存在。

かけがえのない、唯一の・・・。



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