小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第10章
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第10章-3


その日生まれたばかりの鳴門に“九尾を封印した”のだと言った港。
が、蒜山にもそれが鳴門にとってどんな影響を与えるのか皆目わからなかった。

とりあえず、港によって病院に戻されていた鳴門には外見的には何ら変わったとことは見られなか
ったし、その後の検査でも特に問題はないと診断された。
施設に預けてからも、異変らしい異変もなく。

「ま、強いて言えば、やけに怪我の治りが早い子だなぁとは思われていたみたいだけど・・・」

だが、結局はそれも“九尾”の影響であると言う確信は持てなかった。


『何もないなら、それに越したことはないんじゃがの・・・。まぁ、このことを港から聞かされてお
ったのはワシだけのはずじゃし。鳴門自身に危害が及ぶことはないと思うが・・・』

蒜山はそう言って、重い溜息を付いた。
そう願ってはいるものの、今後何も起こらないという保障もない。
案山子の監視は、万が一、という事態に備えてものだった。


『本来なら、二人を関わらせるべきではないのかもしれん。が、こんな小さな村じゃ。年も同じだ
し、それも避けられん。ならば一層のこと、お前の目の届く範囲で一緒にいさせた方が良いじゃろ
うて・・・』

『でも、佐助が心を開くかどうか・・・。そもそも、あの二人は性格も間逆ですし、仲良くなるとは
思えませんが・・・』

『なーに、そういった方が以外と上手くいくもんじゃ』

別に、馴れ合うばかりが友達でもなかろう。
蒜山はそう言って、案山子の肩をポンポンと叩いた。

『それに、今の佐助には鳴門のような友達が必要なんじゃよ。お前なら、わかるじゃろう?』

『・・・どうですか、ね・・・』

案山子は首を竦めて、そう答えるしかなかった。
そんな案山子に、蒜山は声を上げて笑い。

『やはり、お前が適任じゃな。それに、・・・』

そもそも、それがお前の望みだったじゃろう?
蒜山は目を細めた。

『あれとの約束は、お前にとって何よりも大切なもんじゃろうて』

そう言われてしまえば、案山子に反論する術はなく。

『それは、・・・反則ですよ。先代』

『ハハハッ。年の功じゃ、諦めい』


そう言った蒜山も、二人が中学2年の冬に亡くなった。
本来ならば、その時点で案山子はその役を降りても構わなかったのだ。
蒜山の後を継ぎ、“火影”となった綱手も、それを強制することはなかった。
いや、どちらかと言えば、それを望まなかった。

『お前は、お前自身の人生を大切にすべきだ』

そう言った、綱手。
だが、・・・。


『これが、俺自身の人生ですよ』

迷うことなくそう口にした自分に、案山子自身驚きもした。

『馬鹿な、男だ・・・』

そう言われて、『確かに』と思わず苦笑しつつ。それでも、・・・。

後悔はしない−−−。
そう、思った。



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