小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第9章
1ページ/4ページ


第9章-1


「案山子の話だと、“火影”や“九尾”のことは伊館から聞かされているようだな・・・」

綱手が確認するように問う。
佐助は「あぁ」と短く答える。

「ならば余計な話は省こう。だが、佐助・・・。お前は団扇のことをどれくらい知っている?」

改めてそう問われ、佐助は一瞬戸惑う。
いや、もちろん佐助とて、団扇本家の人間、だ。

「団扇は、・・・かつて名のある忍の一族だったと聞いている。実際、屋敷の地下室にはそれらしい
道具や巻物みたいな物もあった・・・」

と言っても、佐助自身はそういったものにほとんど興味はなく、自ら調べようとしたことなどなか
ったのだ。
だから、そう口にしてみたものの、言葉が続かない。
知っていることと言えば、ほとんど伊館から聞いた話だけ、なのだ。

「後は、団扇は“火影”を守る使命を持った一族なんだと、伊館から聞いた・・・。それから、伊館
は団扇と“九尾”に何らかの関わりがあると、・・・」

そう、言っていた。
が、結局、その意味はわからずじまいだった。

「そうか、・・・。伊館はそこまで知っていた、か・・・」

それでも、綱手は表情を険しくしてそう呟いた。

「伊館は港と僅かの間だが親しくしていたようじゃから、の。港も随分、伊館のことを可愛がって
いたようだし、何か話していたのかもしれん・・・」

そう言ったのは自来也だった。

「港・・・?」

聞いたことのない名に、佐助は思わず自来也に問う。

「あぁ。かつて、“火影”だった男だ。伊館から聞いておるんじゃろう?」

伊館が唯一心を開き、慕った“火影”。

「港はな、ワシのもう一人の息子のようなもんじゃった」

そう言って、自来也は懐かしそうに目を細める。
そして何故か、チラリとナルトを見やった。

「あれが生きていれば、村も変わっていたのかもしれん・・・。一見、優男に見えたが、の。芯の強い、
人を好く、良い男だった・・・」

そう、しみじみと呟いた自来也に、綱手がキツイ視線を向ける。
自来也はそれに気付いて、慌てたように頭を掻く。

「悪い、悪い。それは後で話した方が良いよのぉ」

「そうだ。今は、“団扇”の話、だ・・・」

綱手はそう言って、腕を組む。

「つまり、お前自身は“団扇”のことをほとんど知らないということだな・・・」

綱手にそう言われ、佐助は頷くことしかできなかった。
そんな佐助をじっと見やい、綱手は納得したように頷く。

「お前が恥じることではない。団扇の歴史は、ある意味隠したくなるようなもの、だからな・・・」

恐らく、佐助の父親である不岳にとっては特に・・・。
そう言って、綱手は小さく息を吐く。

「団扇の歴史は、この村ととおにある。が、それはある意味因縁めいたもの、だ」

「・・・因縁?」

眉を顰める佐助に、綱手は頷く。

「そう、・・・。それを説明するためには、かつてこの村が“木の葉隠れの里”と呼ばれていた時代、
その設立当時まで遡る・・・」

綱手はゆっくりと話し始めた。


団扇一族は特殊な瞳術を使い、あらゆる戦闘に長けた忍の一族として知られていた。
そして、戦国時代後期に同じくずば抜けた戦闘能力で無敵と謳われていた千手一族とともに木の葉
隠れの里を設立したのだ。

が、初代火影の座を巡る主権争いで、団扇一族は千手一族に破れ、里の政からは徐々に遠ざけられ
た。
さらに、その後“九尾”が里を襲い、それを仕組んだのは団扇だという噂までもが囁かれた。
それによって、団扇一族は居住区をも里の片隅へと追いやられ、屈辱的な扱いを受けながら生活し
ていた。

「それに不満を募らせた団扇一族は、度々里にクーデターを企てたという話もある。が、ここまで
はあくまでも言い伝え、だ。本当のことかどうかなど、わからん・・・。だが、・・・」

綱手はそう言って、再び小さく息を吐いた。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ