緋色の書簡
□HAPPY BIRTHDAY 真弘!
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この世に 生まれてきて
くれたことを
私は
感謝したい……
HAPPY BIRTHDAY 真弘!
八月になり、季封村は猛暑を迎えた。
そして、学生には嬉しい夏休みの真っ最中だ。
珠紀も例に漏れず、楽しんでいたのだが……。
「え……、美鶴ちゃん。今なんて……?」
「ですから、十七日が鴉取さんの誕生日でして。ちょうどその日は日曜日ですし、如何様にお過ごしになれるのかと……珠紀様?」
珠紀の顔がだんだん真っ青になっていく様に美鶴は首を傾げるが、すぐにその原因に気づく。
「珠紀様。もしかして、鴉取さんの誕生日を…」
美鶴の言いたいことをすぐ悟った珠紀は、縦に首を振る。
つまり、珠紀は真弘の誕生日がいつなのか知らなかったのだ。
「どうしよう……」
先ほどよりさらに顔を青くして、珠紀は呟く。
「だ、大丈夫ですよ。まだ一週間とちょっと先ですし……」
「うー……」
「あの、私もできうる限りご協力しますから…」
元気づけるが、そんな美鶴の努力も儚く、珠紀は机に突っ伏したままだった。
¶ ¶ ¶
翌日、珠紀は真弘の誕生日プレゼントを買いに、村の商店街の店の一部を見て周った。
けれど今回はこれといったものは、みつからなかった。
その次の日は別の場所で探した。けれど、その場所でも同じ結果だった。
そんな事を何日も何日も繰り返し、真弘の誕生日まであと三日に迫り、そろそろ街に出て探そうかと考え始めた頃だった。
: : :
その日は、格段と暑い日だった。
日傘や帽子を被っていない珠紀は、その強い日差しによって、軽い頭痛を覚える。
「……気持ち悪い」
「わっ!」
「きゃっ…!」
ふらふらとふらつきながら歩いていると、突然誰かの肩とぶつかってしまい、その弾みで転びそうになり、珠紀は思わず目を閉じる。
けれど、衝撃はいつまで経っても襲ってこなかった。
(――…あれ? 痛く…ない?)
恐る恐る目を開けてみると、見知った逞しい腕が珠紀を支えていた。
「おい、大丈夫か?」
「あ、拓磨?」
拓磨が珠紀を支えていたから、転ばずに済んだらしい。
「珠紀、大丈夫か?」
「あ、祐一先輩。はい、なんとか。拓磨が支えてくれたので」
声をかけられ、珠紀が返事をすると祐一は、そうかと言い、微笑む。
それと同時に、拓磨が珠紀から腕を離す。
「それにしても、珍しいね。拓磨と祐一先輩が一緒だなんて」
「そうか?」