色彩の書簡
□Sweet Halloween
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どうして今こんな状況なのか。
当事者である拓磨ですら理解しえない。
「ねぇ・・・拓磨」
後ろには壁、目の前には妙に艶のある声を出す珠紀。
拓磨は顔を赤くしながら動くことすらできずにいた。
事の始まりは昨日の夜。
美鶴からハロウィンパーティをするから宇賀谷家に来てほしいと告げられた。
翌日の放課後、宇賀谷家に着いた途端慎司と美鶴に捕まった拓磨はそのままハロウィン用の衣装に着替えさせられた。
どうやら"鬼"ということで拓磨の仮装は"吸血鬼"のものだった。
居間に行けばすでに全員が集まっており、すぐにいつもと変わらない馬鹿騒ぎが始まった。
そんな中、拓磨はある一点から視線を反らせずにいた。
目線の先にいるのは玉依姫である珠紀。
大きく開いた襟口に短めの裾の黒いワンピース。
恐らく魔女の仮装なのだろう、大きな帽子も被っている。
好きな相手だからだろうか、拓磨はその姿が特別可愛く感じていた。
そんな視線に気づいたのかふと拓磨と珠紀の目があった。
すると珠紀は意を決したように皆に気付かれないように拓磨を連れて居間を出た。