色彩の書簡
□【我慢の限界】
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いつもの屋上。
クロスワード片手に、拓磨はその光景を不機嫌そうに見ていた。
【我慢の限界】
「あ〜私の海老フライ!」
美鶴の作る大好きなおかずの海老フライが、真弘の口に飛び込んだ瞬間…珠紀は叫んだ。
「残してるから嫌いだと思ったぜ。」
「違います!好きだから最後に取っておいたのにぃ〜!」
「じゃあこれから先に食べる事を、ススメるぜ!」
「ひどいです!私だって…えいっ!」
真弘の手元にある紙袋から焼きそばパンを抜き取り、珠紀は急いで開けて口に入れた。
「あ〜テメー、何しやがる!」
「仕返しです!美味しい〜♪」
「返せ、この!」
真弘は髪の毛をグシャグシャと撫で回し、珠紀は悲鳴を上げた。
「ちょっと、何するんですかぁ〜!髪の毛グシャグシャになったじゃないですか!」
「仕返しだ、ザマーミロ!」
反撃する手を真弘はヒラリとかわし、奪い返した食べかけの焼きそばパンを口に含んだ。
「あっ!?」
拓磨は小さく叫んだ。
「どうした、拓磨?お前も欲しかったか?」
「いや…別に。」
(なんでだ?)
「もう…。いいですよ明日はもっといっぱい海老フライ作って貰います!…きゃっ!」
「…眠い…」
たまご焼きを口に入れた瞬間、隣にいた祐一が珠紀の膝の上に倒れる。
「あ〜!?」
拓磨が叫ぶ。
「今度はなんだ?クロスワードの答えでもわかったか?」
「…いや……別に。」
(なんでなんだ?!)
「よこせ!」
「あ〜!」
今度は唐揚げを口に入れる瞬間遼が後ろからもたれ、珠紀の箸ごと口に入れた。
「!?テメ…チッ!」
拓磨は叫びたいのを耐え、舌打ちして立ち上がる。
「拓磨?もう戻るの?」
「あぁ。」
拓磨は短く返事をすると、振り返らず屋上の扉を閉めた。
「なんで…簡単に触れる?触らせる?!」
苛立ちを抑えられない拓磨は、廊下の壁を強く殴った。
〜放課後〜
「拓磨お待たせ!」
珠紀が掃除を済ませ教室に入ると、拓磨は無言で立ち上がり…鞄を掴んで足早に下駄箱へ向かう。
「た…たく…ま、足速いよ。」
声をかけるが拓磨は振り返らない。
珠紀は立ち止まる。
それでも拓磨は気付かなかった。
(…だいたい、アイツも無防備過ぎなんだよ!守護者だからって、甘やかし過ぎっつーか。)
ブツブツ文句を言いながら歩いていた拓磨は、ふと珠紀の気配がない事に気付いた。
拓磨はやっと振り返ったが…珠紀はいなかった。
「?!珠紀?」
急いで来た道を戻った。