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□12.こっち向けこっち向けこっち向けー!
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「…ぉ」
俺達はゲームがない限り会わない。
会う理由がないから。
でも、会いたいって思うときはある。
気になってしまうから。
いや、斉藤じゃないぞ?
あいつといたらうるさすぎて恥ずかしい。
道路の向こう側。
時間的にバイトだろうか。
周りに連れらしき人物はいない。
音楽を聴きながら歩いてる。
こんな車も人も大量に行き交う所で名前を叫ぶ勇気は俺にはない。
でも、もう一ヶ月は生の声を聴いてない。
せめて、こっちに気づいてくれれば、
一瞬でいい、こっちを向いてくれ!!
俺は立ち止まり、美柴が見えなくなるまで目で追っていた。
――パッパ‐
クラクションの音で我にかえる。
「…。」
この状況で気づくほうが珍しいか…。
俺はまた行き先に向かい足を進め始めた。
―ヴヴヴ…
ピッ
「…もしもし?」
『珍しいな、アンタがそんなとこでボーっとしてるなんて。』
振り向いてはくれなかったけど、俺の思いは通じたらしい。
end
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