短編夢部屋
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枯れない花がないように、咲かない花もない
「で、いつまで人の膝で寝てんのさ・・・」
「うーん、この庭の桜が散るまでかな?」
「今日あたり全部散るって、もうすぐ雨も降りそうだし・・・雨が降る前に宿舎に帰りなよ?もうすぐ帰国でしょ?」
「雨は・・・嫌だなあ・・・ボク・・・ずっと此処にいたいなあ・・」
帰っても、もう『無敗』じゃなくなった自分の居場所は、あの国にあるだろうか?
悔いのないレースをした
楽しかった
マシンとあんなにも心を通わせて、思い切り走ることの楽しさをちゃんと自分は学んだ。
自分は、自分に満足している
けれど周りはどうだろう?
こんな自分を、もう『無敗』ではない自分を、受け入れてくれるだろうか?
「・・・ミハエル、花がずっと咲き続けることができないみたいに、『永遠にそうであり続ける』ことなんて、何にも誰にもできないし、そうする『必要』もないんだよ・・・」
「え?」
「ずっと『無敗』でいる『必要』なんてない。そんなことに意味も価値もきっとないよ・・・」
見上げた彼女は、前を向き、一つ一つ散っていく桜を見ていた
「春がすぎて、桜が散っても、それでもまた春がくれば桜は咲く・・・咲けるんだよ・・」
だから人は、この季節が巡るたびに春の花に心を奪われる
桜がずっと永遠に咲く花ならば、きっと誰もこの花を見上げて何か想うこともしないだろう
「枯れてもまた咲ける・・散ってもそれは無駄じゃない・・・・負けてもまた勝てる・・・勝てなくても無駄にしなきゃいい・・・・アンタはまだまだ咲けるよミハエル・・・」
そういってクシャクシャと頭を撫でる手が温かい
「だから帰りな。アンタには、アンタを咲かせてくれる仲間やライバルがたくさんいるだろ?」
そうだね。ボクには大切な仲間、ライバルたちがいる。
だけどボクを泣きたいくらいに甘やかして、強くしてくれる存在はキミだけだ。
だから、またきっと会いにくるよ
「大好きだよ・・・」
「・・・・私もだよ」
咲かない花はないのなら
この互いの恋心という花も
寂しさに何度枯れても
何度も咲くだろう
枯れない花がないように
咲かない花もないのだと・・
end