短編夢部屋

□拍手お礼SS
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『姉ちゃんは、オラが絶対お嫁さんにしてあげるダス!』




そういってまだ私より小さかったキミがくれたのは、『約束』の花冠














「これ、あげるダス・・」


そんなセリフとともに頭にポスンッと何かを置かれた感触に、私は食器を洗っていた泡だらけの手を素早く水で流して、手を拭いて、恋人によって頭に置かれた物の確認をした。




「わー、懐かしい!シロツメクサの花冠じゃない。ジロが作ったの?」



「仕事場の横の草むらにたくさん咲いてたんダス・・・」



「ジロは昔からこれ作るの上手かったよね!リョウはすぐに力任せに茎を折っちゃうからすぐグチャグチャになっちゃってたけど!」


まだ今よりずっとずっと幼かった頃の話だ。


可愛い可愛い弟のように思って、そして彼も『姉ちゃん』といって自分を慕ってくれていた頃の思い出。



あれから年月は過ぎて、幼かった自分たちは『大人』へと成長し、『姉のような存在』『弟のような存在』からをも卒業し、今は誰よりも互いを近くに感じている『恋人』となった。



変わっていくことの寂しさに戸惑うこともたくさんあったけれど、二人でいれば、もう何も怖くないと思える。



過去があったから今の自分たちがあり、そして二人で生きていける未来を選ぶことができる。






「ありがとう!すごく嬉しい・・・・?・・・どうしたの、ジロ?そんな怖い顔して・・」




「こ、これは緊張してる顔ダス!!」




「緊張?」




「オ、オラ・・・約束は絶対守るダス!!」




「へ?」




そういって掴まれた私の手の指に、昔よりずっと大きくなってゴツゴツした指が震えながら、細い銀色のリングを嵌めていくのを見ていた。




「オラと結婚して欲しいダス!!」




大声でそういって痛いほど手を握って、私の返事を待ちながら緊張で震えている彼に、たまらない愛しさだけが溢れていく。



ねえ、どんな顔をしながらこの花冠を作ったの?



何を想いながら、この『約束』の花言葉を持つ花を一つ一つ結んでいったの?



長い年月の中で、私もキミも、確かに変わっていったけれど



変わらない愛しさと『約束』が、確かにずっとあったね。




「はい。私と結婚してください。大好きよ、ジロ。」



過去と今を結ぶ花冠に『約束』を



キミが握ってくれている手の薬指に嵌められた指輪に未来の『誓い』を




過去も、現在も、未来も




キミとずっと一緒に・・・





end
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