過去拍手

□キミの気持ち
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「俺のことどう思ってんの?」

唐突に言い出した銀時の言葉がきっかけだった。

三ヶ月ほど前、どうしてだったか思い出せないが、銀時と土方は肩を並べて飲んでいた。
酔った勢いだろうか銀時が土方に向かって『抱きたい』と言った。
土方もその時はなんとなくそんな気分で断ることもなく流された。
それ以来定期的に会って身体を重ねる関係を続けていた。

が、銀時が突然聞いてきた。
どう思っているのか。

この関係を言葉にするならばセ○レの一言で済むだろう。
しかし土方の思いとなればまた話は別だ。
土方は銀時のことを憎らかず思っている。
最初はわけのわからない無茶をする奴だと思った。それから顔を合わせる度に敵対し張り合ってきた。
正直、かなりムカついた。銀時は人を小馬鹿にしたような挑発をするので、こちらもムキになる。だが、ムカつく一番の理由は勝てないからだ。
いつも負けているわけではないが、引き分け止まりで勝ったためしがない。
何故勝てないのか考えているうちに気になる存在になった。
9割はダメな奴でこんなマダオに!と思うが時折見せる本気の銀時はいい漢だった。
だから身体の関係を結ぶのもやぶさかではない。
もちろん身体の相性はすこぶる善かった。
これも関係が続いた要因の一つだ。


「急に何言い出すんだ?」

銀時の意図がわからなかった。
土方の本心を聞きたいのかもしれない。しかし聞いてどうするのだ。
『これからもいいセフ○でいような』とか言うのか?
それとも銀時はもうこの関係を終わらせたいからこんなことを言い出したのか?

「だってよ、お前、身体はノリノリなくせに普段はよそよそしいっつーか他人行儀だろ?」

○フレが人前でベタベタできるか?!

それは口にはできない。
何かをハッキリさせたらこの関係が終わってしまいそうだ。
終わらせたくない。
それが土方の気持ちだ。

「なぁ、どうなの?」

今日の銀時はしつこい。
答えを出さなければ開放してくれなさそうだ。

「俺、虚しくなって来たんだよな」

心のない関係に飽きたということだろうか。
これはやはり遠回しな別れ話だったのか。

「テメェの言いたいことはよくわかった。じゃあな」

引き際は弁えているつもりだ。別れたくないからといって未練がましい真似はしたくない。
嫌われたくないから。

…!
今、気がついた。
別れたくないよりも嫌われたくない。
今のままなら別れてもまた喧嘩友達に戻れる。
未練がましく付き纏えば嫌われるに違いない。
嫌われたくないと思う程に土方は銀時のことが好きだったのだ。

本当はとっくに好きになっていたのに、自分の気持ちに蓋をした。
表に出してしまえば全てが壊れるから。
だから自分で自分の気持ちに蓋をして気づかない振りをしていた。
こんなにも好きだったのに。

「どこ行く気だよ」

もう終わりだと思い、立ち去ろうとした土方を銀時は呼び止めた。

「もう、テメェと話すことなんてねぇ」

「あるだろ?俺はお前の気持ちを聞いてんだから。答えろよ、土方」

「答える必要なんかねぇ!」

答えてどうなるものか。
どうにもならないこの気持ちをそっとしておいてほしい。

「テメェはどう思ってんだよ」

自分の気持ちをはぐらかす為に聞いてみたが、我ながらいい巻き返しだと思った。
土方にどう思っているか聞いたということは銀時も何かしら土方に対して感情を持っているということだ。

「えっ?」

銀時の動きが止まった。
信じられないという驚いた顔をしている。

「ど、どうって…」

答えに詰まっている。
銀時だって土方への思いを口にできないのだ。
言葉にする程の思いがないから困っている。そうに違いない。
やっぱり終わりだ。

「今更あらたまって言えるかよ。照れ臭いだろうが!」

「へ?」

変な声を出してしまった。
今更?照れる?
何のことだ?

「最初にちゃんと言ったろ?それに最中にだって散々言ってんじゃねぇか!」

「…」

お、覚えていない。

最初は酒に酔っていて行為そのものが虚ろだ。
最中なんてそれどころじゃなくて、何を言われたかなんて全く記憶にない。

「覚えてねぇの?酷くねぇ?」

ここで覚えてないとは言えない。
一体銀時はなんと言ったのだろう。

「お、覚えてねぇわけじゃねぇが…素面で面と向かっては聞いてねぇ」

またいい言い訳だ。
これで銀時から聞き出すことができる。
銀時の本当の気持ちを。

「だからこっ恥ずかしいんだよ!好きだなんて素面で言えるか!」

今、『好き』って言った?
確かに言った。
土方は我が耳を疑った。夢じゃないだろうか。
これが現実ならもう我慢しなくてもいいのか?
言ってもいいのか?

「俺も好きだ…」



END

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