頂き物

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「よぉ〜っし!みんな、酒は行き渡ったかぁー!!それではっ今日は、無礼講だぁー!!しっかり呑んで食って、日頃の疲れを吹き飛ばし、明日への栄喜を養ってくれっ!!乾杯!!」

「カンパ〜イッ!!」

世間一般は大概がもうすぐ『GW』とやらに入るであろう四月末を前に、真選組は江戸から左程離れていない『温泉宿』での一泊慰安旅行的な催しを開いていた。
『GW』に入ると、浮足立った輩がいつも以上に増える。…となると『真選組』の仕事もいつも以上になるだろう。その前に、労を労ってもらいたい。という真選組局長…近藤の粋な計らいで、開かれた宴である。
あまり、江戸から離れ過ぎてしまうのは気が引ける…と言う隊士達の意見も汲み、近場の温泉宿でならいいだろう。…と実現した。
左程離れていないとはいえ辺りに民家は疎らで、買い物は何処に行っているのだろう?と余計な心配をしてしまうくらいの長閑さである。

「日頃の疲れた身体を癒すには、やはり風呂だ!」
と、近藤がかなり探しまくっていた『温泉宿』…『本物の温泉なのか?』と怪しくはあるが、成人男子10人程が手足を伸ばして余裕で入れるくらいの大浴場に、そこから扉一枚挟んで外に出ると露天風呂も、申し訳程度ではあるが併設してあった。
手狭であろうが、怪しかろうが露天風呂に変わりはない。身体だけではなく心のコリまで癒してくれた。
すっかりリラックスしまくっている山崎が、湯舟に身を任せ手足を伸ばし大股開きになりながら言った。
「近藤さんに感謝だなぁ〜♪『ゴリラでストーカー』だけど…なんだかんだ言ってやっぱりオレ達の局長!ちゃんと思ってくれてるんだぁ♪ありがたいなぁ〜♪『ゴリラでストーカー』だけど…。」

「…プッ。」
土方はそんな言葉を、思い出し笑いして我に帰った。
『乾杯』で始まった宴の中、土方も宿の名前が書かれた浴衣に身を包み、日本酒を嗜んでほろ酔い気分である。
隊士達が盛り上がる中…主宰である近藤が土方の視界に入った。
出来上がっている…。すでに浴衣どころか、産まれたままの姿で踊りまくっている…。
土方は薄目で遠くを見つめた。
『ゴリラだ…。あれは、ただのストーカーゴリラだ!!…しかもバカだ!!』と確信した。

そんな土方の所に
「土方さん!お酌させてください!」
一人…二人…と皆が我よ我よと酒を注ぎに来る。
「…こんな近くに温泉があるなんて知らなかったっすね♪土方さん!」
と、お猪口になみなみと日本酒が注がれる。
それを、クイッと飲み干し「あぁ…そうだな…なかなか、いい湯だったな。」
と、ほんのり頬が赤く色付く…。屯所内では、なかなか拝めないような微笑みで隊士の一人に答える。
そこにまた別の隊士が分け入り
「明日は朝風呂、行きやしょう♪今度は俺、土方さんの背中洗いたいっす♪」
今夜の風呂では、お酌同様…我先に!!と言わんばかりに土方の背中流しの奪い合いだったのであろう事が伺え知れる。

そこへ、一人の仲居がお盆を抱えて割り込んできた。
「はい。はい。ちょっとごめんなさいよっ!♪」
『背中をながす♪』とウキウキ顔の隊士を蹴り上げ右足の下に顔を踏み付けにしたまま、運んで来た料理を並べた。
「近くのォ…その辺で採ってきたばっかりのォ…何とかァ〜?って葉っぱの天ぷらでございますっ。抹茶塩的なこの粉か、こちらの何汁ぅ〜?みたいなツユらしきもので、お召し上がりください♪」
と、足元の隊士に告げる。
「…あっ!おメェは、これなっ。」
と土方の御膳に出された物は業務用マヨネーズ。
「おぉ〜!気が利くじゃねェ〜かぁ♪」と上機嫌。
感謝の言葉を告げようと見上げた時には、もうその場に仲居はいなかった。



宴も最高潮になった頃、裸踊りも最高潮の酔っ払い近藤が突然、声を張り上げ隊士達に告げた。
「よしっ!ここで、今夜のトッテオキなゲストを紹介するぜェ〜!!カモ〜ン♪」
親指を立てた合図と掛け声の後に登場したのは三人の芸者『パー奴・パチ奴・神奴』だった。
近藤があらかじめ宿の主人に『芸者』を頼んだらしいが、このご時世に、この時期…人手不足の上「低予算でなんとか…。」の頼みに困り果てた主人が人づてで『万事屋』の事を知り依頼した。
もちろん万事屋に女手などいない。いや…約一名、女らしき奴はいるが、コイツは問題外だ。むしろ男らしいくらいの野獣だっ!
久しぶりの仕事で有り難かったが、無理!無理!!と断ろうとしたその時、お登勢が二階に上がってきて『滞納している三ヶ月分の家賃請求』払えなければ即刻『段ボールハウス!!』と宣告。
強制的…いや、もう脅されて頭三つ貸し出された。
調子に乗った主人も「書き入れ時だぁ〜ついでに仲居も頼む!!」という流れで今に至るらしい。

 
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