小説〜オリジナル〜

□Dragon Lake
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― その昔、人々は龍(ドラゴン)を守り神とし、共に暮らしていた。世が戦で乱れた時、龍はその力で瞬く間に戦を終わらせた。しかし人々はその力を恐れ、龍達の命を次々と奪っていった。その時、龍の赤子を城の地下に封印したという…





「クックック。これが伝説のドラゴン。やっとお目にかかれたって訳だ。」
「…ん…?あ?」
「さぁ、ドラゴン!俺と一緒に」
「ギャァオォォォ!」
「あ…あぁぁぁぁぁぁぁ!!」





「タッタッタッタッ」
「やぁ、リリン。どこに行くんだい?」
「こんにちは。えぇ、ちょっと。」
そう言って少女はまた階段を上っていく。
「リリンちゃん。今日は書庫には寄って行かないのかい?」
「こんにちは。えぇ、今は行く所があるから。もしかしたら後で寄るかも知れないわ。」
書庫の前の兵士に別れを告げ、リリンはまたしばらく走り、階段の最上段へと飛び乗った。目の前にはベランダの様になった所がある。リリンはそこまで行き、大きく息を吸い込んだ。
「はぁはぁ…ん〜!気持ちいいなぁ」
そこはこの街で一番高い場所。水の街として有名なこの街の中央に聳え立つ石畳の城の最上階。水に囲まれる城下町を一望できる、リリンだけのお気に入りの場所だった。この城で雑用などの手伝いをしているリリンはある時、ここを見つけてから暇が出来ると行っていた。





「…あっ!そろそろ戻らなきゃ!」
そうリリンが帰ろうとした時、
「バサッ バサッ バサッ 」
「何!?…っ!?」
音と共に強風が吹き、後ろを振返ったリリンの目の前にいたのは、青い大きな生き物だった。見た事がない動物、角の生えた大きなトカゲの様に見えるがその背中には大きな羽があり、空を飛んでいた。いや、どこかで見た気がする。そうだ、書庫の本で見たドラゴンに良く似ている。確か本の中のドラゴンはとても危険な生き物だったはず…。
「ひっ…!」
リリンは怖くて後ずさりをし、尻餅をついた。それをドラゴンはただじっと見つめている。青くて大きな目に幼さが感じられて、怖いという気持ちが薄らいできたリリンはゆっくりと立ち上がり恐る恐るドラゴンに近付いた。
「…あなたは誰?もしかして、ドラゴンなの…?」
ドラゴンは目をくりくりさせて、リリンを見つめ続ける。と、ドラゴンが口を開いた。見えた牙にリリンは少し驚いたが、その声は幼かった。
「どらごん?わかんない。」
自分の事を知らないのだろうか。
「あっ!」
「きゃっ!」
いきなり近付いてきたドラゴンに驚いて身構えたが、リリンが目をあけるとドラゴンは自分の寸前で止まっていた。ドラゴンの目が輝いている。
「…ん?もしかして、これ?」
リリンは自分の首に掛けてあった大きな石のペンダントを取ってドラゴンの前に出した。ドラゴンの目がペンダントの石を追って動く。
「これはね…」
ドラゴンの目線がリリンへ移る。
「私のお母さんが私にくれた物なんですって。私、お母さんの顔全然覚えてないけど、この石を見てたらお母さんはきっと優しい人だったのかなとか思うの。」
そう言ってリリンは笑う。
「…これ、気に入ったの?いいわ、あげる!」
ドラゴンの目がぱぁっと輝く。
「くれるのか?」
「えぇ。ちょっと待ってね…はい!ほら、石とあなたの目、同じ空の色。そっくりね。」
リリンはポケットにあった、園芸用の縄にペンダントを括り付け、ドラゴンの首に掛けた。
「わぁぁぁ!」
ドラゴンは喜んでくるくると飛び回る。
「私にはこのペンダントの石、大き過ぎたし。お母さんの石もあなたと一緒に居られて喜んでる気がするの。大事にしてね。」
「あぁ!」





「ねぇ、どうしてあなたはこんな所にいるの?」
「僕は城から出たいんだ。外ってどんなとこだ?」
ドラゴンがリリンに尋ねた。
「お城から出たいって、外から来たんじゃないの?」
「ううん。お城の中、暗いとこでずっと寝てたんだ。」
「寝てたって…」
そういえば、書庫の本に城の地下にドラゴンの赤ちゃんを封印したって書いてあった気が。もしかして、それが本当でその赤ちゃんがこの子供のドラゴン!?赤ちゃんの時だったから、ドラゴンが何か知らないのかしら?
「だから、外ってどんな所だ?」
「…ごめんなさい。私も知らないの。赤ちゃんの時からお城に住まわせてもらってて、町にすら買い物で何回か行っただけなの。お爺ちゃんに町の外には出ちゃいけないって言われてたし。」
二人ともしょんぼりとした顔をする。
「…あっ、でもこの街は水で囲まれているから、ある時間になると水面がキラキラ輝いてまるで鏡の様になるんですって!」
「本当か!?」
ドラゴンは目を輝かせた。
「僕、外に行く!キラキラの物沢山見るんだ。じゃあな!」
「バサッ バサッ 」
「まっ、待って!私も外を見てみたい!」
リリンは叫んだ。
「え?う〜ん、いいぞ!お前も一緒だ。背中に乗れ!」
「えぇ!」
笑顔でリリンはドラゴンの背中に乗った。
「行くぞぉ!」
「バサバサッ」




外はどんな世界が広がっているんだろう?今までありがとう、お城の人達。色んな物を見に行ってきます。きっと戻ってくるからね!バイバーイ!

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