小説〜オリジナル〜

□笛
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一人で膝を抱える僕の元に何処からか笛の音が聞こえてきた。とても澄んだ音をしていて、聴いた事もない寂しげな音をしていた。



その音を聞いてからというものの、頭から離れなくなった僕は、次の日学校でその笛の音を聞いたかをみんなに問い続けた。

一人の女の子は家族で食事をしている時に聞いた。ぽかぽかあったかくて、安心するような音をしていたそうだ。

一人の男の子は試合をして勝った帰りに聞いた。とても軽快で思わずウキウキしたという。

また一人の女の子は、デートをしている時に聞いた。胸が熱くなって、とても幸せな気分になったらしい。

訊く人訊く人、それぞれ聞いた音が違った。誰一人として同じ音を聞いたという人はいなかった。僕はそれがどうしてなのか、どうしてそんなに気になるのかが分からなかった。



それが僕の住んでいる所に伝わる、「心の笛」の音だとお婆ちゃんから教えてもらった。それぞれの心の音。それを聞かせてくれる笛らしい。

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