小説〜二次〜

□風
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「今日は暑いなぁ」
カンカンと音のする中で、ツインテールの少女が言った。しかし、ショートヘアの少女は何やら作業をしていて答えない。
「なぁ、蛍ぅ。何作ってるか、そろそろ教えてや。なぁ!」
「うるさい」
そう一言言うと蛍と呼ばれた少女は腕に何かをはめ、ツインテールの少女に向けた。すると「バカンッ」と音がした。
「うぎゃぁ。何すんねん!」
「蜜柑、作業中は極力話しかけないでっていつも言ってるでしょ」
「せやかて。デートでもしよかと思ってきたら、蛍なんか作ってるんやもん。暇や」
蜜柑と呼ばれた少女は口をとがらせた。
「……もう少しでできるんだから、邪魔しないで。暑いんだったら、他の部屋にいればいいでしょ」
そう、ここアリス学園は国立の重要施設である為、例によってほとんどの部屋が冷暖房完備だ。しかし、彼女たちが今いるのは蛍の研究室であり、風で彼女が作っているロボの部品が飛んでしまうため締め切って冷房をつけずに作業をしているのだ。
「ん〜、うちあんまり冷房好きやないんよ。確かに暑いのは嫌やけどな。頭の上からバーって風くるやん、前髪がちょろちょろ動いてときどき目に入るんやもん」
蜜柑の言葉を意識の端で聞きながら、蛍は作業へと戻った。
「ルカぴょんに笑われるんはまだええけどな、棗に馬鹿にされるんはムカつくわ。ときどき寒いしな。うちはやっぱり、夏は扇風機が好きやなぁ」
その時、一瞬蛍の動きが止まった。
「首振るのがええんよ。だけど、あっつい日に扇風機の前に行って喋ると声震えるやん。思わず『あ〜〜』ってやってしまうよな」
そう蜜柑は笑い、蛍は口の端をわずかに上げて呟いた。
「馬鹿」
「あ!今、バカって言うたやろ!?」
「黙りなさい。さぁ、できたわ」
文句をつけようとしていた蜜柑だったが、一瞬にして笑顔になった。
「何?何ができたん?鳥?」
「風バード1号よ」
二人の前には小さめの鳥型ロボットがあった。
「このボタンを押すと、窓から入ってきた虫を感知して風によって外へと誘導するのよ。私、虫ってあんまり好きじゃないの」
「なんや。そんなん、うち呼んだら追い払ったるのに」
気が抜けた顔をする蜜柑に蛍は不機嫌そうな目を向けた。
「なんで虫が入ってきたくらいでわざわざあんたを呼ばなきゃならないのよ。それに真夜中は来れないでしょ」
「むー。あ、も一つボタンあるけどこれ何?」
頬を膨らませようとした蜜柑は水色のボタンを指差した。
「これは…。やっぱりやめようかしら」
「えっ、何?教えてや」
蜜柑は立ち上がった蛍を見上げた。
「私は片づけるから、外に出て蜜柑」
「えぇ〜。これなんやの、蛍ぅ。……えいっ」
チラチラと蛍を見、蜜柑は好奇心でそのボタンを押した。すると、風バードの翼が前に移動し、くるくると回り始めた。扇風機のように。蜜柑は目を輝かせ、蛍を見た後「あ〜〜」とやり始めた。蛍は鉄くずを抱えながらそんな蜜柑を見て微笑んだ。

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