多生之縁

□言い訳否定
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「えっと…、リカルド…」


「何だ?」


リカルドに駆け寄ってリカルドの名前を呼んだレイン。
その声に反応して振り返ったリカルドは少しだけ歩くスピードを緩める。


「ヒュプノスだったんだよ…な?」


「そうだが。…あぁ、アスタルテか」


「そ、そうだ。久しいな…」


俯いてしまったレインに向けて今まで厳格であったリカルドに笑みが見えた。
よくよく見ると、レインの耳が赤い。
照れているのだろうか。


「またこうやって並んで歩くのを待っていた」


「ほ、本当か?…我も、だ」


レインが女らしい。
失礼だが、今まで人形に近かったが今はどこからどう見ても乙女だ。
俺はイライラしながらそんな二人を遠くから眺める。


「何だ、ありゃあ?」


「あらあら、仲がよろしいですわね」


ニシシと笑いながら近寄ってきたイリアに更に俺のイライラは増すばかり。
すると、モアが音もたてずに俺の隣のすぐ近くにまでやって来た。
そして、内緒話をするように口許に手を添えながら俺の耳に口を近づけてくる。


「ナーオス基地でのお詫びとして教えてあげるね。ヒュプノスとアスタルテは前世で"コイナカ"だったんだ」

「"小田舎"?二人と田舎に何の関係性があるってーんだよ?」

「それじゃなくて"恋仲"。恋人同士だったってこと」

「マジか!?」


二人に目を再度凝らしてみる。
二人は並んで歩きながら色んな話をしているようだが、リカルドはレインの歩くスピードに合わせながら歩いていた。
それと、レインが乙女な顔をしていることに俺はたまらなくイライラした。

(俺にそんな顔しないくせに、おっさんにはするのかよ)

小さく舌打ちしてから両手を頭の後ろに回して歩く。


「それで…。どうしたんだ?私の顔ばかり見て」


「楽しそうに話すレインの顔を見ていた」


「えッ!?あ、う……馬鹿者め」


恥ずかしかったのかそう言ってそっぽを向いたレインを見てクスクスと笑うリカルド。
リカルドがレインの手を取ると、レインはリカルドを見上げる。


「元気そうでなによりだ」


「私はいつでも元気だ。リカルドとこうして手を繋ぐと、また更に元気になるぞ」


「いつでも握ってやるさ」


なんだよあの雰囲気。
おっさんのキャラの変わり様半端ねぇレインもだけどよ。
入れる雰囲気じゃねーよむしろ近くにいるだけで邪魔だよきっと。
俺は空を仰いで大きなため息をついた。
空は青いな、広いな。
ぼんやりとくだらないことに思考を巡らせていると、隣にアンジュがいた。


「んだよ」


「スパーダ君、諦めちゃダメよ?まだまだこれからたくさんチャンスはあるわ」


「俺敵わねぇって。前世で恋人だったおっさんとただ昔色々した俺とじゃ差がありすぎるって」


俺とおっさんとじゃ差がありすぎる。
態度の差と、気持ちの差と、年齢の差と、その他もろもろ。

(俺だって卑屈になるさ)

アンジュはそんな俺を見て「スパーダ君」と名前を呼んだ。
俺はアンジュに視線を移すと、アンジュの眉がつり上がっている。
明らかに怒っていた。


「そんなにネガティブやマイナス思考になってたら全部うまくいかなくなっちゃうの。せめて後ろ向きにならないで前を見ようと思わなきゃ」


「前を見る、か」


俺の口に笑みが戻る。
アンジュに向けて笑って見せると、アンジュも小さく笑った。

遠くからルカの声が聞こえる。
ナーオスが近い。
俺とアンジュは普段よりは歩く速度を上げて歩き出した。




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