多生之縁

□前向き歩き
1ページ/10ページ

戦場を飛び出してすぐに、俺は一度息を吐いてから話を持ち出した。


「これからどうするよ?こうなった以上、家には帰れないしな」


「え?どうして?」


案の定、ルカはぽかんとしている。
そんなルカの肩に腕を置くように掛けてから「お前なぁ」と呆れたように言ってやると、ルカは意味がわからないのか狼狽え始めた。


「そりゃそうだろ?俺たちゃ異能者捕縛適応法で捕まったんだぜ?そのうえ脱走者だ。ノコノコ帰ってみろよ、たちまちお縄に決まってんじゃねーか」


不安と納得、絶望が全て混ぜ合わせたような表情をして「そうだね」と呟いてから俯いてしまった。


「当初の予定通り、聖都ナーオスに向かおうよ。手がかり他に無いしさ」


「そういや転生者がいるらしいって話なんだよな?じゃ、そうしよーぜ」


笑いながら俯いてしまったルカの背中を少し乱暴に叩くが、反応がない。
すると、横から甘い匂いがしたから見てみると、レインがいた。
レインはルカの後ろに来てルカの頭を優しく撫で始める。
涙目のルカは顔を上げて、レインの方を向いた。


「疲れたよね。早くナーオスに行って、やることして休もう?」


小さな笑顔。
ルカは釣られるように笑って、涙を拭って頷く。
それに、俺は無性に腹が立った。

(何で俺には笑わないでルカにばっか笑うんだよ)

何だか心の中がぐしゃぐしゃしてきて「あーっ」と言いながら頭をぐしゃぐしゃになるまで掻いた。
大きくため息をついてから落ちたキャスケットを拾って再び被る。


「さー、行くわよー!」


歩き出したイリアたちに置いていかれないように歩き出すと、レインがこっちを向いている。
足を止めたレインは俺がレインの隣に歩いて着くまで待っていてくれた。
何か用だろうかと思っていると、急にレインが俺の髪に手を伸ばしてくる。


「うわっ!?な、何だよ?」


「髪が、ぐしゃぐしゃだったから…」


手で俺の髪をすいてくれたレインはある程度整えてから手を離した。
そして、ふわりと微笑んだ。


「いいよ、ベル」


思わずその笑顔に固まってしまった俺を置いて小走りでイリアたちのところに行くレイン。
レインを顔と視線だけで見送ってから、自分の髪を少し弄る。

(いつもレインの笑顔を見てるルカが羨ましく思えてきた…)

間近で見たレインの笑顔があんなにすごいものだとは思わなかった。
俺も小さく微笑んでから、離れてしまったみんなを追いかけるために走り出す。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ