多生之縁

□小さな感情
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ガタン、ゴトン…。
列車の中で揺られながら、頬杖を付いてぼんやりと窓の外でも眺める。


「レインって何か大人な感じがするよね」


俺の向かいに座っているイリアがこの静寂に耐えきれなくなったのか、適当な話題を持ち出していた。
自分のことを話題に出されて少々驚いているようだ、きょとんとイリアを見つめている。


「私はまだ未成年だし、イリアとあまり歳も変わらないはずだが?」


レインの返答に、特別合図もあったわけでもないが、イリアと目があった。
そして、ほぼ同時に(ニヤリと不気味に)微笑み合う。

(全然話が)

(噛み合ってねェェェッ)

心の中ではきっと同じことを叫んでいるだろう。
このことを叫んでいない奴はルカ位だ。


「そぉじゃなくて、その雰囲気!本当の歳よりも大人に見えるその雰囲気のことよ!」


イリアがそう言うと、レインはしばらく固まった後、ハッと顔を険しくさせた。


「私…、老けて見えるのか…?そうなのか!?」


急に立ち上がったレインはルカにその険しい顔で問いかけた。
当然ルカは驚き、体を跳ねさせて防御体制に入っている。


「え!?そ、そんなことないよ…。レインさんは歳相応の雰囲気と外見を持って、ます」


「嘘偽りはいらない!正直に言うんだ!」


隣のレインを見ながら、それは脅迫だぞと呟く。
ルカは戦場に連れていかれる恐怖でただでさえ泣きそうになっているのに、レインの脅迫のせいで溢れそうになっている。
いや、もう既に溢れてしまった。
騒がしくしていると、キキーッとブレーキ音が響く。


「着いたみたい、だな」


「着いたぞ、降りろ」


完全に列車が止まると、外から声が聞こえた。
立ち上がりぐっと背伸びをしてからみんなぞろぞろと扉に向かう。


「とっととしろ」


「うっせーな、今降りてるよ」


偉そうなグリゴリ兵の口調に、ようやく外に出れたのに心は曇ってしまう。
先に行ってしまったイリアを眺めながら前に進む。


「お前はもう泣き止め」


「うっ…うっ…」


グリゴリ兵もいい加減疲れてしまったのか、疲れたように言っている。
結局、溢れてしまった涙が止まらなくなってしまったらしい。


「大丈夫か?」


涙目でレインを見上げるルカは少しだけ怯えているようだ。
小さく防御体制に入った。


「あの時はすまなかった。ミルダは襲いかかってくるような奴じゃないからな。だから、怯えないで欲しい」


ルカの隣ですまなそうに言っているレインに、思わず言ってやりたくなる。

(電車の中でのことは謝らないのかよ)

俺が言ってやりたいところだが、あの雰囲気で突っ込むほど言いたいわけでもないからな。
すると、ルカは泣き止んだようだ。


「は、はい!レインさん」


ルカの言葉に小さく微笑んでからルカの頭を優しく撫でる。


「レイン・ミラージ、レインでいい。それに、敬語はいらない。ルカ」


レインの言葉にパッと明るくなったルカは嬉しいのか満面の笑顔だ。


「はい!じゃなかった…、うん!レイン」


「それでいい」


口元にまだ笑みを残したまま、レインはこっちへと向かう。
レインがルカに対して笑ったことに無性に腹が立った。

(くっそ、ルカのヤロー。後でいじめてやる)

そう思いながらルカを睨み付けるが、ルカは気付かない。


「ねぇ、あたし思ってたんだけど。レインとスパーダってどんな関係なの?」


隣にいたイリアに言われ、俺は唸りながら頭を掻く。


「あれだな、友達かな」


イリアはニタリと笑いながらこちらを見ていることに気付き、たじろぐ。


「な、なんだよ」


「へぇ、あたしてっきり恋人なのかと。だって、スパーダレインと一緒にいること多いし、危なくなった時レイン助けてたじゃん」


「だからって、付き合ってるとは限らないだろ」


つまらないとブーイングしながら頬を膨らませてしまったイリア。
それを見た後、レインとルカは俺の隣に立っていた。





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