多生之縁
□一輪の華
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奴に付いていくとさっきよりは広い部屋に連れてこられた。
奴は俺達を中に入れてから鍵を閉める。
(俺達を逃がさないつもりか)
密室なこの部屋の空気は少し濁っているのか息苦しい。
奥の薄暗い場所から1人の男性が姿を現した。
俺達の目の前で目を瞑りながら立っている。
「これより適正検査を行う。目の前の相手を倒せ、以上だ」
奴はそれだけを俺達に告げてから離れていった。
フッと鼻で笑ってから奴を笑みを浮かべながら見つめる。
「相手が1人だと?ナメられたもんだなっ!」
言ってやっても奴はまた何も言わずにこっちを見ているだけだった。
つまらねぇと呟いてから両手を後ろに組む。
すると、ルカが狼狽え始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!この人と戦うの?だって人間じゃないか!!」
その言葉に反応した奴はルカを見つめた。
そして、口角を少し上げてから冷たく言い放つ。
「そうだ、早く倒せ。さもなくば死ぬかもしれんぞ?」
腕を組みながらこれから面白いものでも見るようなふざけた口調で言った。
「ヤだよ!モンスターならともかく、この人にだって親や友達が…」
ルカは必死に戦闘を回避しようと説得するが、奴は聞いてもくれない。
奴は男性に目を開けても良いぞと告げた。
男性の目がゆっくりと開かれ、ルカを見つけてからキッと睨み付ける。
「貴様ッ!!」
いきなりの怒声に臆病なルカは体をビクリと跳ねさせた。
ルカはキョロキョロと辺りを見回し、俺を含めた皆が自分を見つめていることに気付き、男性の方を見てから自分を指差す。
「え?僕…?」
きょとんとしたルカをそのままに男性はルカに指を差す。
「覚えて…いや、思い出したぞ!貴様に殺された同胞を!そして、貴様に砕かれた四肢の苦痛を!」
男性の言った言葉の意味がわからないのか固まっていると、ルカの方に向き変えたイリアが妖しい笑みを浮かべながらルカを見る。
「あんたって見た目によらず残酷な事すんのね」
当然そんなことしないであろうことをイリアは知っているだろう。
それを知りながらイリアはルカいじりをしているのだ。
(あっ、先越されちまった)
それを惜しく思いながらも話を聞く。
「そ、そんな!人違いでしょ?ケンカなんてした事ないし…ましてや人を殺すなんて!!」
相手の様子がおかしい。
男性が自分の肩を抱き締めたと思ったら男性の姿がみるみると変わっていく。
「今、貴様を殺し、ラティオの同胞達への手向けとしてやるッ!!死ね!アスラ!!」
聞き覚えのある声にいつも見ている夢の内容を思い出す。
(アスラ…、デュランダルを持ってた奴か…。それがルカだっていうのか…?)
考え込んでいると男性が姿を変え始めた。
ハッと顔をあげると男性は前世のラティオ兵になった。
「なんだ〜?こりゃァ」
「に、人間じゃない?ねぇ、これって…」
皆の体が強ばる。
皆覚悟を決めて武器を取り出す。
「コ ロ スゥゥ!!!」
そのラティオ兵がルカに襲い掛かる。
「うわあぁぁああ!!」
ルカのまぬけな叫び声で戦闘が始まった。
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