sail in the same bort

□sky
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見るな。

(その瞳は僕だけのものなのに)

言うな。

(その言葉は僕だけのものなのに)

聞くな。

(僕だけの言葉だけを聞いていれば良い)

今にも泣き出しそうだった。
今にも溢れてしまいそうだった。
それでも、この感情を抑えてしまうのは、きっと。

(こんな惨めな僕を見たら、彼女はもう僕に笑顔を向けてくれないからだろう)

マティウス様は微笑んでから兜を再び被る。


「今、ここに、チトセ・チャルマを正式にアルカ信者となることを認めよう」


チトセは嬉しそうに笑ったのを見て、僕はつられるように拍手をした。
その嬉しそうな笑顔を向けてこちらに駆け寄るチトセ。
チトセに手を取られた時は、もう驚きで変な顔になっていたことだろう。


「やったわモア。私、正式にアルカ信者になれた!!」


心の底から喜んでいるチトセに、僕は笑みを見せて「おめでとう」と言い、頭を撫でる。
チトセはムッとした顔を見せ「私は子供じゃない」と拗ねた。
それを聞いて、僕は更に笑う、チトセも笑う。


「モア、話がある」


僕たちが笑うのを止めさせるように、マティウス様が言った。
スッと笑みを消し去り、頷く。


「チトセ、君は部屋の外で待っていてくれないか?」


チトセはきょとんと首を傾げたが、頷いてから部屋を出ていった。
それを確認してからマティウス様の方へ歩み寄る。


「もう勧誘は良い、これからはモアが決めていくのだ」


「……どういうことですか?」


怪訝そうな表情をマティウス様に向けると、マティウス様は兜の中からくぐもった小さな笑い声が聞こえた。
「何笑ってんですか」と大形に片方の眉を吊り上げて言うと、空気がピンと張り詰めたのがわかる。


「モア、チトセは任務をモアが独断し、行動すること。つまりは好きなことをして良い、ということだ」


「好きなこと…、何でもですか?」


「あぁ、だが、裏切ることは許さん。わかったな、モア?」


僕はマティウス様を鋭い目付きで見つめてから、新しい"オモチャ"、または"遊び"が見付かったかのように笑う。
小さく歯を見せてから、落ち着いたのか優しげな笑顔に戻った。


「ありがとうございます、マティウス様」


ペコリとお辞儀をしてから部屋を出るためにドアの方へと向かう。
堪えきれなくなったのか、声を出して笑い出す。


「は…、ははは…っ。アハハハハッ…、カハハハ……ッッ」


それはまるで悪魔の如く。
自分でも抑えることの出来ない笑い声。

(それってつまり、殺り放題ってコト?最高のプレゼントだよ、マティウス…!!)

笑い声を止める。
だが、顔は未だ笑っていて。



その笑みは嘘か、真実(まこと)か






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