sail in the same bort
□earth
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船の甲板に出て向こうを眺める。
風が髪を靡かせ、頬を撫でているのに、モアの表情は優れない。
(風、嫌いなんだよね)
浚っていってしまう。
言葉も、感情も、笑顔も、愛しい人も。
「……なんて、僕は」
───弱いのだろう。
そんな自分が情けなくて、嫌いで、自嘲してしまう。
前を見つめると、目前には目的地の王都レグヌムが見えた。
王都レグヌムに降りると、なんだか騒がしい。
すると、人だかりを見つけ、何だろうとその人だかりに混ざり、人をかき分けていく。
「放せっ!!放しやがれっ!!」
そこには、必死に王都兵に抵抗している浅緑の髪に帽子を被っている少年がいた。
何があったのだろうと疑問に思いながら、ふと頭に過る。
(もしかしてケンカ?不良少年?)
だが、その考えは簡単に崩れる。
「異能者捕縛適応法によりお前を連行する。この悪魔め、大人しく歩け!!」
そう、異能者捕縛適応法。
ということは、彼も異能者だろう。
少年は王都兵をキッと睨み付けてから、更に暴れる。
「悪魔だとォ!!くそ、言ってくれるじゃねーか。このっ、放せー!!」
すると、王都兵が少年の首辺りを叩き、少年は気絶してしまった。
それを見てからようやく気付く。
(何をしているんだ僕は。何でただの傍観者になっているんだ。助けなければ、助けなきゃ…!!)
グッと拳を握り、王都兵の前に立ちはだかる。
「何者だお前は!?邪魔するならば、お前も捕えるぞ!?」
「捕えたければ捕えろ。もしそうするなら、彼は置いていけ」
そう言ってから首を垂らしている少年を指差す。
周りの人はどよめき、中には「何てことを…」と嘆いている人もいた。
「そんなことをしたら、こいつは野放しにされてまた厄介なことになってしまう。それでも良いのか?」
王都兵の質問に、僕は口角を上げて微笑する。
「良いよ、それでも。そんなことになったら僕が飛んでいってすぐに止めるから」
「ふざけるな!!じゃあこいつじゃない他の異能者たちも止めれるのか!?邪魔するなら捕えるまでだ!!」
ぞろりと現れた無数の王都兵。
何処に隠れていたのだろうと疑問に思うが、そんなことはどうでもいい。
(彼が連れていかれてしまう…、止めなくちゃ…)
少年を捕えている二人が行ってしまう。
僕を囲んでいる王都兵は五人、多いも少ないも関係ない。
「みんな、邪魔だよ。僕を通さないと……死ぬよ?」
僕は相手に聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。
「罪人よ、戦慄し、深紅の雨を降らせることで償え…」
右手を地面に付くと、右手を中心に魔法陣が表れた。
右手を地面から離すと、地面から表れた巨大な剣。
それを握り、王都兵に向ける。
「震え上がれ、罪人よ」
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