sail in the same bort
□black
1ページ/8ページ
薄暗いナーオス基地からようやく脱出。
そのせいか太陽が眩しい。
(太陽からの攻撃が痛い…、灰になっちゃうよ…)
「うー」と唸りながら手をかざして影を作る。
目が慣れてきたところで前を見ると、レインとリカルドのおっさんがイチャイチャしていた。
うわ、とか思いながら遠巻きに眺める。
ギリギリと歯を食いしばりながら憤怒を堪える、このやろう。
(僕だって、僕だってチトセとイチャイチャラブラブしたいもん!!)
前世ではラティオの恋仲コンビであった二人に今さら怒ったってどうにもならない。
仲間だと信じているスパーダに目をやると、イリアに何か言われたらしく声を荒らげていた。
明らかにイライラしている。
僕はそんなスパーダにニヤニヤと笑いながら足音と気配を消して近付く。
そんな僕に気付いたらしいスパーダは八つ当たりでもするように僕を睨み付けた。
でも僕はそんなの無視して内緒話をするように口許に手を添えながらスパーダの耳に口を近づける。
「ナーオス基地でのお詫びとして教えてあげるね。ヒュプノスとアスタルテは前世で"コイナカ"だったんだ」
「"小田舎"?二人と田舎に何の関係性があるってーんだよ?」
「それじゃなくて"恋仲"。恋人同士だったってこと」
「マジか!?」
バッとレインとリカルドを見たスパーダ。
「マジマジ大マジ」と不気味にニシニシと笑いながら言う。
それから僕もイチャイチャラブラブしている二人を見る。
僕にさえあんな顔を見せてくれない乙女なレイン。
不愉快な気分になった僕が舌打ちすると、スパーダとハモってしまった。
僕がハモったことに感動しながらスパーダを見るが、それどころじゃないらしいスパーダは両手を頭の後ろに回して歩く。
僕は唇を尖らせながらスパーダの後ろをついていきながら、チトセを思い出す。
(ごめんねチトセ。ちゃんと目的を果たしたらイチャイチャラブラブしてあげるからね)
込み上げてくる涙を堪えながら空を仰ぐ。
「くしゅんっ」
「どうした、風邪か?」
「そうかもしれないですね。モアが窓を開けっぱなしにして出ていきましたから」
そう思えばなんだか寒気がするようなしないような。
マティウス様に心配をかけたくないため、私はマティウス様の部屋を後にした。
それから再びモアの部屋に戻って、部屋の隅にある本棚いっぱいに詰められた本に目をやる。
その中から一冊だけ取り出して開いてみるが、さっぱり読めない。
難しい私たちが使っているような言葉とは違う見たこともない言葉の列が無数にも。
こんなものをモアは読んでいたのだろうか。
読めない本をいつまでも読もうとするのは時間の無駄だ。
本を閉じてしっかり元の場所に戻す。
次に辺りを見回して目に入ったのは、机の上に置いてある本だった。
表紙には"日記"と書かれてあるが、こんなところに置いて誰かに見られたらどうするつもりだろう。
(例えば、私とかに)
日記を手に取る。
鍵とかそういうものは全くついていなくて、見てくださいとでも言っているような感じであった。
勝手に見てはいけないと思いながらも、好奇心に負けて表紙を開く。
「あ、しまった…」
そこでようやく思い出す。
僕の部屋の机に無防備にも日記を置いたままだ、と。
(チトセにでも見られたら僕死んじゃう、死んじゃうよ)
「あわわ、はわわ」と両手で頭を押さえながら悶える。
頭の中にはどうしようとしか出てこなくて、頭の中は混乱状態。
「そうだ、早めに僕の部屋に行って持ってこよう。そうだ、それがいい」
その間にチトセが見つけなければいいけれど。
今日は何度願えばいいのだろう。
神様なんて信じていないけれど、今だけは信じてあげるからお願いします。
僕はそわそわと足をあげて待つことにした。
.