sail in the same bort

□black
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「でも、なんでマティウスみたいに転生者が必要なの?」


「やっぱり創世力を求めているんじゃないかな?」


ルカの言葉に急にイリアは頭を痛がり始めた。
それに僕は「大丈夫?」と問いかけてみるも、痛がっているイリアは大丈夫には見えない。
それでも強がって「大丈夫よ」と言ってみせるイリアに僕はやれやれと言わんばかりに眉を下げて笑う。
イリアの頭を軽く撫でてからイリアを抱き寄せる。
初めは抵抗を見せるものの、諦めたのか頭が痛くてたまらないのか抵抗を止めて僕に抱き締められていた。
チクリ、胸が痛む。

(こんなはずじゃ、ないのにな)

僕の独断だけれど目的を果たしたくてみんなの仲間になって。
今、こうして抱き締めているイリアを──ために仲間になったのに。
僕はできるのかな。




表紙を開くと、モアのであろう丁寧な字が並べられていた。
モアってこんなに字が上手かったんだ。
私知らなかったな。

『今日から僕はアルカの一員だ。
マティウス様を護りたいと思った。
マティウス様はなんだか僕に似ている。
独りぼっちで、誰も信じてなんかいない。
いつか、僕がもっと強くなったら。
"僕がいるよ"って"だから大丈夫だよ"って、言いたいな』

これはモアがアルカに入った日に書いた日記だろうか。
日にちを見ると、なんと六年前のようだ。
六年前にはもう異能の力に目覚めていたのだろう。
パラパラとページを飛ばしてみる。

『今日の僕はおかしい。
狂っていて、止まらない。
壊したくてたまらない、殺したくてたまらない。
誰か僕を止めてくれ。
誰か僕を助けてくれ。
誰でもいいから』

『ようやく自分をコントロールできるようになってきた。
そんな僕に部下ができた。
バカなやつらだ。
僕についてきたってどうにもならないのに。
でも、できちゃったものはしょうがない。
リーダーらしく、していこう。
………。
部下なんて、信じられるのがこんなに嬉しいなんて』

『今日はチトセと会った。
信じられない、これは運命なんだろうか。
そうだったらいいな。
現世こそチトセを護りたい。
殺したりなんかしない。
例え罪を犯しても、この身を汚しても。
絶対に振り向かせてやるんだからな!!』

思わずクスリと笑う。
それから息を吐いて、モアの日記を閉じた。
アルカに入って六年間色んなことがあったんだ。
辛いことも嬉しいことも、悲しいことも楽しいことも。

私とモアはまだ隣にいた時間が少ないから、わからないことが多い。

(わかってほしいの?わからなくていいの?)

私は、私がわからない。




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