sail in the same bort
□earth
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意識が帰ってきて、うっすらと目を開ける。
本当にうっすらとしか開けていないためか、黒くぼやけていてよくわからない。
ちゃんと目を開けると、いつもの天井、いつもの光。
「また、あの夢…」
ぼんやりと呟いてから、顔の両側に手を置き、ベッドを押した。
その反動で起き上がり、窓の外を眺めて微笑む。
「今日も、行くか」
誰かに言っているわけでもない。
僕自身に言いかけているんだ。
ブーツを履き、コートを来てから外套に手をかける。
「………」
外套に付けられている十字架に十字架のペンダントが掛けられているエンブレム。
それは、僕がクロスウェイ家である証。
目を伏せてからその外套をはおい、白を基調としたローブを着る。
すると、僕の部屋のドアが叩かれ、「どーぞ」と返事をした。
「モア=クロスウェイ、マティウス様がお呼びだ」
「了解、直ぐ様行くって伝えといて」
それを聞いたドアのあちら側にいるだろうアルカ信者は去っていったのか気配を消した。
小さくため息を漏らしてから立ち上がる。
(またサクヤ様、ストラスは本当にサクヤ様が好きなんだな…)
直ぐ様向かうと言ってしまったのを思い出し、思考をシャットダウンさせる。
フードを目深に被り、ドアを開けた。
夢を見るようになってから、早二年。
それをきっかけにアルカに入って、早六年。
時間というのは早いものだ、何もしていないのに流れていってしまう。
何も、していないのに。
「マティウス様、モア=クロスウェイ只今参りました」
「モアか、早いな」
「直ぐ様と伝えたはずですが」
少し挑発気味に言うと、兜を被っているマティウス様は兜の中で笑い「そうだったな」と言った。
目深に被ったフードのせいであまり前が見えないのに、鬱陶しく思い、フードを取る。
「異能者捕縛適応法、というのは知っているな?」
「確か、異能者を捕える法ですよね。それが何か…」
きょとんと首を傾げると、マティウス様は僕に背を向けた。
少し躊躇うように黙り込んだマティウス様に、不思議に思ってマティウス様の名を呼ぼうとした時、それは遮られる。
マティウス様が話し始めたからだ。
「捕まるなよ、モア」
マティウス様の言葉に少し驚きで固まってしまうが、僕はマティウス様の背中に微笑み、歩み寄る。
手を伸ばしたら届きそうな距離で立ち止まり、兜を取った。
兜の中から溢れた甘い匂い、美しい桃の髪。
その美しい桃の髪に手を伸ばす。
「……、何のつもりだ」
「大丈夫ですよ、捕まっても帰ってきますから」
結わえてある髪を崩さないように優しく撫でながら囁く。
すると、マティウス様は俯き、僕は撫でていた手を離した。
「モア、今日も信者を増やすためにレグヌムに向かってもらおう」
「わかりました」
ローブを翻し、この部屋から出ようとした。
部屋のドアに手を掛けて、クスリと笑う。
「行ってきます」
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