sail in the same bort

□beginning
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彼女は彼しか見ていなかった。
僕のことは見てくれない。

どうして?
答えは、無い。

どうして?
何を問うているのか、わからない。

どうして?
彼を見続ける?


ど う し て ?
 わ か ら な い




目を開けると、光が僕を迎えてくれた。
真上を見ていた首をごろりと横に動かすと、満面の花が咲いている。
このまま、また眠ってしまおうか。


「ストラスッ」


目を閉じようとした刹那、目の前に少女が現れた。
暫く固まって目を開く。


「サクヤ様…、どうしたんですか?」


起き上がり、彼女の名を呼ぶと彼女は髪を耳に掛けたてにこりと笑う。


「どうしたも何も、いつも私の傍にいる貴方が居ないから…、こんなところに居たのね」


「捜してくれたんですか?」


笑顔で問いかけると彼女は笑って答えてくれなかった。
僕に背を向けて美しい花園から去ろうとする彼女から離れないように追いかける。


大好きな大好きなサクヤ様。
出会った時、僕は君に惚れてしまった。
その日から僕は、サクヤ様を一生を守りきると決めたのだ。

───それなのに。

目の前には彼女が居た。
僕は目を見開き、彼女に駆け寄る。
表情は何もない、ただの"無"。
視線は虚空を見つめていて、光が無かった。


「サクヤ様…、サクヤ様!!」


すると、サクヤ様の瞳から溢れた一筋の涙。
サクヤ様の唇が微かに動く。
聞き取れなくて、サクヤ様の口許に耳を近づける。


「ストラス…、私を……殺して…」


弱りきってしまった彼女。
そんな彼女を壊れない程度に抱き締める。


「嫌です…、いくらサクヤ様の命令でも、出来ません…」


「お…願……、い…」


その声は震えていて、胸がズキリと痛んだ。
サクヤ様がこうなってしまったのは全て、僕のせい。
これが償いだと言うのなら、僕は罰を受けよう。
堪えきれなくなった僕の瞳からも涙が止めどなく溢れる。


「殺…して…、じゃないと…私…、壊れてしまう…」


「大丈夫、大丈夫です…。僕が居ます…、ですから、そんなこと言わないでください…っ」


「貴方は…、私を守ると…、誓ったはず…でしょう?お願いよ…、ストラス」


無数の涙の筋が頬を伝い、落ちていく。
そうだ、僕はそう誓った。
今、ここでサクヤ様を殺すことがサクヤ様を守ることなんだ。
懐から短刀を取り出し、サクヤ様に向ける。


「うわぁぁぁああああっっ!!」


肉に刃物が刺さる嫌な音、嫌な感触。
それは、愛するものの最期の感触。
涙のせいでぼやけて滲む世界。
彼女は僕に向けて、笑っていた。
そして、ゆっくりと動いた唇。


『ありがとう』


倒れる音。
冷たくなっていく温もり。
広がる深紅。
落ちる涙の雨。


崩れ、落ちる。
声を上げた、悲鳴を上げた。
ただただ、叫び続けた。




あぁ、いつからこんなことになってしまったのだろう。

幸せだったあの日々に戻りたい。


『ストラス』


愛しい笑顔で名を呼んでくれる彼女は、もういない。

もう、会えない。


「サクヤ、様…。サクヤ…、愛しています…」




いつかまた出会える日まで、

僕は貴女を、待ち続けます。






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To be continued...
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