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□形なき大切なもの
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「やっぱり、アクセサリーとか欲しいですよね」
「何、急に……」
「デートの記念に」
「あー……」

女の子はそういうの好きだよな。

弥子ちゃんは高校生だからオシャレとしてもつけたいだろうし。

だけど……

「無理」
「何でですか」
「アクセサリーとか似合わないし。それに恥ずかしいじゃん」
「じゃあー……」

弥子ちゃんはポーチからケータイを取り出し、腕を伸ばす。


「マジで悪いけど、写真も苦手。待ち受けとかにすんでしょ?」
「でもでも、やっぱり形に残る何かが欲しいです」


記憶なんて、長い人生ですぐに忘れてしまうもの。

形なきものだから。だからこそ、形のある何かで残しときたいと思うのだろう。


「何か二人で持てるものって………」
「……何だろうな。俺でも弥子ちゃんでも持てるもの」
「そういえば!」
「何……」
「今の警察手帳ってスケジュール帳がないんですよね?」
「ああ……数年前まではあったけどな。いいな」
「分かってくれました?!!」
「うん……」


俺と弥子ちゃんは近くの大きな文房具屋に入る。


石垣曰く、ここの文房具屋は漫画に使う画材なんかもあるらしい。

そんな店ならスケジュール帳もたくさんあるだろう。


「あ!これなんて、どうですか?」
「どれ……」


無地のスケジュール帳なんだが、色は豊富だ。


「いいと思う」
「本当ですか!?笹塚さんはこの深緑のスケジュール帳が似合いそうです!!」
「そ?まあ、黒だと警察手帳と区別しにくいし。これでいいか」
「はい♪ぴったりです」
「弥子ちゃんは薄ピンクかな。これとか」
「わあ!私好みの色です♪」


俺のイメージカラーが弥子ちゃんの好みの色。


つまりは俺の好みは君の好み。


こんなことで幸せを感じた俺。


そして、君の笑顔で更にね。


君といるから生まれる幸せの形。



これは形はないけど、俺にとって大切な思い出なんだ。
 

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