Memory
□理由はたったひとつ
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彼の苦しみや悲しみと言える過去を知ってから
もう、何回目だろう……
夢にうなされる。
「待って……!笹塚さん!!笹塚さんっ!!」
声が枯れる程に叫んで
息が切れる程に追い掛けて…………
それでも、貴方は振り返ることなく前に進んでく
伝えたい言葉………
まだ、言えてないのに。
「やっと……追い付きましたよ!」
無理に笑顔を。掴んだ彼の腕……
「えっ………?」
彼を囲む様に、立方体の物体……
色は赤…………
「あああああっ!!!」
「………子!起きなさいっ!!弥子!!」
「……………」
母に激しく肩を揺らされて無理矢理に現実世界の朝………
「あの刑事さんが亡くなられて、ショックなのは分かるけど………。休日にいつまでも寝てたらダメでしょう?」
「うん………」
今日は………笹塚さんのお墓参りに行こうって思ってた………
だけど………
行きたく、ない………
だって………
笹塚さんのお墓が赤い箱によって、囲まれそうだもん………
でも…………
今、行かないと一生……
私は……行けない気さえもする。
彼になんていう、言葉を最後にかけてあげるべきか分かる程に私は大人じゃない………
そして、今の私にかけるべき言葉も分かる程に大人じゃない……
だけど………
窓の向こうにいる、あの化け物………
「何をアホ面をしているのだ、ヤコ。謎の気配がするぞ」
「……………」
「早く支度をしろ。このウジ虫」
「分かってるよ。行きます〜」
だけど、この魔人という名の化け物についていけば……
全て解決してくれる。ということくらいは想像出来る程に大人、かな……
(ねぇ、ネウロ……)
(なんだ、ヤコ)
(ネウロには解けない謎はないんだよね……)
(ふははは。何を今更)
(ちょっと、確認したかっただけ………)
この魔人なら………
笹塚さんのこと、6のこと、Xのこと………
全て食べてくれるだろうから………
私がアンタについてく理由はたった、ひとつ……
そうして、今日も私は色々な人の想い……自分の想いを胸に叫ぶだけ。
「犯人はお前だっ!」
end