阿修羅妃
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「今日は組み手をしてもらいます」
1時間目からハードな授業だと思う。朝ご飯、食べてこなきゃ良かったかも…。
「男女混合だから端からクジ引いて。同じ番号の人と組むように」
先生はそういって端から箱を回した。あたしの番になり、1枚だけ引くとそこには『5』の番号が。
キョロキョロと辺りを見渡して同じ番号の人を探す。
「げ、お前かよ」
すぐ後ろで聞こえた声に振り向くと、檜左木くんがあたしの紙を覗き込んでいた。
「え、じゃあまさか…」
「俺も5。ほら」
檜左木くんはそう言って紙をひらひらとさせた。
確かにそこには『5』と書かれていて。なんともそれが憎らしい。
「なんだその顔は」
「いひゃいいひゃい!」
嫌がってるのが顔に出てたらしく、檜左木くんによって頬を左右に引っ張られる。
「あーあ、お前みたいなのじゃアレは無理だな」
「アレ?」
一体何なんだろう、と興味を持ち、彼の次の言葉を待つ。
「ばかだなお前。それも分かんねーの?女子と組み手だったらおいしいハプニングがあるだろ」
「おいしいハプニングね…」
何が言いたいのか分かったあたしは、呆れて息を吐いた。
「ばっか!男はみんな考えてるぞ!まぁお前には誰も期待してないから安心しろ」
………昨日は分からなかったけど、この人バカなんじゃ…?
軽蔑の眼差しで彼を見るが、彼はどうやらトリップ中らしい。
「ほら、始めるぞ。早く準備しろ」
先生はあたしたちを見ながら手を叩いた。それに慌てて檜左木くんと向かい合う。
軽蔑の眼差しはそのままで。
「制限時間は20分。先に相手を床に伏せた方が勝ちだ。始め!」
先生の号令で、一斉に組み手が始まった。