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□第83話 反逆C〜VSジャック・中編〜
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時は少し遡り、PM12:05。
タカミチが指揮を執る麻帆良祭実行委員会は、麻帆良祭期間中のあらゆる問題を対処する部署である。
故に、対策本部が屋内に設置されていても、正午に行われたヴラドの映像はモニターを介して認識していた。
「た、高畑先生!今のは生徒による大規模なイタズラなのでしょうか?」
「一般人が混乱しないよう、すぐに部隊を編成して鎮圧に向かった方が…」
ヴラドの映像を確認した複数の魔法生徒がタカミチに進言してきた。
ラグナロクの存在を知らない者なら当然の反応だろう。
「…いや、その件は事前に別動隊に指示を出してある、君達はそのまま告白生徒の担当を頼む」
当然、タカミチはその進言をあっさり棄却する。
今のタカミチは、こうやって何も知らない魔法生徒や魔法先生をラグナロクに近付けさせない事くらいしかできない。
「くそっ、せめて学園長がこの場に居れば…」
タカミチは前日、有事の際に自身も前線へ出られるよう、学園長にラグナロク襲撃を内密に報告して指揮を学園長に頼むつもりだった。
しかしその話を聞いた学園長はタカミチを指揮から外す事なく、逆に「野暮用が出来た」と言って行方を眩ませてしまったのだ。
常日頃から後進育成を目的に、自らが矢面に立つ事の少ない学園長。
ならば、学園長の野暮用とは一体…
「…失礼します」
やや緊迫した声色の訪問者に、タカミチは思考から引き戻された。
「君は確か、西からの増員の…」
「桜咲春樹です、突然ですが近衛門様はいらっしゃいますか?」
春樹は挨拶もそこそこに、早口で用件を述べる。
どうやら学園長に何か用があるらしいが、学園長の行方を知りたいのはこちらも同じだ。
「すまない、学園長は昨日から姿が見えないんだ」
「…やはりか」
小さく呟いた春樹に、タカミチは眉を潜める。
「何か心当たりがあるようだね?」
「いえ、ただの予感です。それより」
春樹は懐から1枚の呪符を取りだし、タカミチに手渡す。
「…これは?」
東洋呪術にあまり詳しくないタカミチには、これがどういう物か分からない。
「御守りのようなものです。アナタ程の方ならこれで耐えられるでしょう」
本当は近衛門様に渡したかったんですが、と呟いた後、春樹は用は済んだとばかりに踵を返した。
「待ちなさい!君は何をするつもりだ」
タカミチの制止に歩みを止めた春樹。
しかし振り返る事はせずにただ一言、
「妹達を、助けに」
とだけ言って姿を消した。