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□カッコウ
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 私は東京出身である。東京とは言っても隅から隅まで都会という訳ではない。ましてや私が幼かった頃の東京となると大したことなかったのである。
 私の記憶は、貧相な東京の片田舎から始まっている。そんな記憶のせいで未だに私のことを東京出身だと認めない人達も多い。
 東京が早送りで再生したビデオみたいな時代のことである。記憶の始まりが一年ずれると様相もガラリと変わる。同級生と話が合わないという悲劇も起こる。記憶の曖昧さを差し置いても、である。
 お年寄りと話が合う。しかし、正直に言って、お年寄りは好きでも嫌いでもない。自分の記憶が正しいことが確認出来て安心出来る相手ではあるが、お年寄りであるが故、証言の信憑性を疑われ、確固たる保証人とはなり得ない歯痒い存在でもあるからだ。

 私の記憶の始まりには、祖父がいた。父の登場は祖父が亡くなってからである。その辺の事情は曖昧にしか知らされていないので、ここでは語れない。それは、どうでもいいこと。私が語りたいのは、祖父との思い出なのだから。
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